「ラフロイグは正露丸の匂いがする」。ウイスキー好きの間で必ず出てくる噂です。気になって検索したものの、「クセが強い」「初心者向けではない」という声に、購入をためらっている方も多いはずです。
私は実際に1本買って、ロックとハイボールで飲みました。先に結論を書きます。噂の香りの正体は、私の表現では「理科室の薬品庫」です。そしてこの香りには、歴史的な裏付けがあります。この記事では、ラフロイグの歴史・語源・製法をひもといたうえで、実際に飲んだ正直な感想と、意外に合うおつまみまでご紹介します。
結論:ラフロイグ10年は「理科室の薬品庫」と表現したくなる強烈な個性のシングルモルト。好みがはっきり分かれます。ロックは、ビターの奥にかすかなフルーティーさ。冷えるとはちみつの甘い香りに変わります。
同じアイラモルトのアードベッグ10年と、どちらを買うか迷っている方は、2本を飲み比べた記事もあわせてご覧ください。
買った理由と選んだもの
ラフロイグとは|1815年創業・アイラ島の「薬品香」には歴史がある

ラフロイグは、スコットランド・アイラ島の南岸で1815年に創業した蒸溜所です(出典:ラフロイグ公式サイト)。名前の「Laphroaig(ラフロイグ)」はゲール語で、「広い入り江の美しい窪地」という意味です(出典:サントリー公式サイト。ボトルの裏ラベルにも英語で同じ説明が書かれています)。

あの独特の香りを生むのが、伝統の製法です。ラフロイグは今も自家製麦(フロアモルティング)を続け、大麦を乾燥させる前に、島で採れるピート(泥炭)の煙を約10〜12時間じっくり当てます。アイラ島のピートはヘザーやコケ、海藻由来の成分を含み、これが薬品のような香りと磯の香りの源になります(出典:ラフロイグ公式サイト)。
面白いのは禁酒法時代のエピソードです。20世紀初頭のアメリカで酒類が禁止された際、ラフロイグは「薬品のような香りだから」という理由で薬用酒として輸出が認められたという歴史があります(出典:サントリー公式サイト)。「理科室の薬品庫」という私の第一印象は、100年前のアメリカの役人と同じだったわけです。

1994年には、当時のチャールズ皇太子(現国王)から王室御用達の栄誉を授かりました。紙筒のパッケージに描かれた紋章(写真の赤枠内)がその証です(出典:ラフロイグ公式サイト)。
私が買ったボトル|並行輸入品(40度・700ml)と正規品の違い

購入前に知っておきたい事実が1つあります。日本で流通するラフロイグ10年には2種類あることです。
| 項目 | 並行輸入品(私が購入) | サントリー正規品 |
|---|---|---|
| 度数 | 40度 | 43% |
| 容量 | 700ml | 750ml |
| 参考価格 | 購入時6,150円(Amazon) | 7,410円(税別・希望小売) |
(出典:正規品はサントリー公式サイト・並行品は購入時の実物表示)

私のボトルの裏面には、輸入者の日本語ラベルがあり、40度・700mlと記載されています。度数が3度違うため、正規品とは飲み口の印象が異なる可能性があります。本記事のレビューは並行輸入品(40度)の感想です。
なぜ正露丸の匂いがするのか(成分の話)
「正露丸の匂い」と言われる理由は、成分を見ると説明がつきます。正露丸の主成分は「木クレオソート」で、ブナやマツなどを炭化する際に得られる木タールを蒸留して精製した液体です。22の化合物からなり、そのうち19がフェノール系の化合物で、主要6成分はグアヤコール・クレオソール・フェノール・p-クレゾール・4-エチルグアヤコール・o-クレゾールです(出典:大幸薬品「木クレオソートの話」)。
一方、ラフロイグの香りはピート(泥炭)の煙に由来します。ラフロイグは専用のピートを焚いて麦芽に香りを付けており、そのフェノールの濃度は40〜45ppmです(出典:サントリー「ラフロイグ製法」)。ピートの煙に含まれる代表的な成分が、グアイアコール(焦げたスモーキーな香り)とクレゾール(石炭とタールの香り)です(出典:WHISKY Magazine Japan「ピートの基礎知識」)。
つまり、正露丸の木クレオソートとラフロイグのピート香には、グアヤコール(グアイアコール)とクレゾールという同じフェノール系の化合物が含まれています。「正露丸の匂い」という噂は気のせいではなく、共通する成分がある、というのが出典から言えることです。それを実際に飲んでどう感じたかが、次の章です。
実際に使って分かったこと
ロックで飲む|ビターの奥に、はちみつの甘い香り

まずはロックです。グラスに注いで立ち上る香りは、まさに理科室の薬品庫。古い病院の香り、とも言いたくなります。
口に含むと、はじめにビターさが来ます。その後、喉の奥に理科室の香りがただよいます。意外だったのは、アルコールのピリピリ感をほとんど感じないことです。40度とは思えないほど口当たりは落ち着いています。
そして、よく味わうとかすかにフルーティーさがあります。氷が溶けてどんどん冷えてくると、今度は甘いはちみつの香りが顔を出します。強烈な第一印象から、時間とともに表情が変わっていく。好きな人にはたまらない1杯です。
ハイボールで飲む|好みが真っ二つに分かれる一杯

次にハイボールです。炭酸水は、わが家の定番のウィルキンソンを使いました。
飲むと、一気に理科室の薬品庫が口に広がります。ビターな飲み口で、喉越しまで理科室。ここまで個性を隠さないハイボールは他にありません。
氷が溶けて炭酸水とウイスキーが馴染んでくると、潮の気配とマイルドなビターさに変わってきます。それでも、喉越しの理科室の薬品庫だけは最後まで変わりません。サントリーはラフロイグを「好きになるか、嫌いになるかのどちらか。」というコピーで紹介しています(出典:サントリー公式サイト)。ハイボールで飲むと、その言葉どおりだと実感します。中間はありません。
Q. ハイボールの炭酸水は何を使いましたか?
A. ウィルキンソン タンサンです。強炭酸がラフロイグの個性に負けません。
炭酸水の飲み比べは別の記事にまとめています。
関連記事:炭酸水3本を飲み比べ|ウィルキンソンとサントリー天然水SPARKLINGは刺激強め、by Amazonラベルレスはマイルドだった
意外な相棒|サバ味噌煮缶との相性

ラフロイグのハイボールは、個性が強いぶん、味の濃い料理と好相性です。私のおすすめはサバの味噌煮缶。伊藤食品の「あいこちゃん 金のサバ味噌煮」は、国産サバを青森県産の辛口津軽味噌で煮つけた缶詰で、化学調味料不使用です(出典:伊藤食品公式サイト)。
味噌の濃厚さと魚の脂で満たされた口の中を、ビターな強炭酸がさっぱりさせてくれます。だから次のひと口が進み、晩酌が止まらなくなります。実は本家の公式サイトも、燻製肉や牡蠣、ブルーチーズなど「塩気とうまみの強い料理」との組み合わせを勧めています(出典:ラフロイグ公式サイト)。燻製肉や牡蠣との組み合わせは私自身まだ試していないため相性の断言はしませんが、「味の濃い料理と合わせる」という方向は同じです。私が実際に試して美味しかった和の答えが、サバ味噌煮でした。
こんな人におすすめ/おすすめしない
- スモーキーで個性の強いウイスキーを探している方 → 最有力の1本です
- 甘くフルーティーなウイスキーが好きな方 → 強烈な個性に驚くはずです。まずはバーで1杯試すのが安全です
- ハイボールで冒険したい方 → 好みが真っ二つに分かれる個性を、ぜひ体験してください
Q. 初心者でも飲めますか?
A. 好みがはっきり分かれるウイスキーです。ロックで時間をかけて飲むと、ビターの奥のフルーティーさや、冷えてから現れるはちみつの香りに出会えます。個性を丸ごと体験したい方はハイボールをどうぞ。
なお、同じアイラモルトのアードベッグ10年も実際に飲み比べました。私の印象では、薬品香はラフロイグより控えめでした。ラフロイグの個性が強すぎると感じた方は、「アードベッグ10年を正直レビュー|「究極のアイラモルト」の煙とビターの奥に、柑橘の甘み」もご覧ください。
まとめ|100年前から「薬品の香り」。だからこそ唯一無二
ラフロイグ10年は、万人におすすめできるウイスキーとは言いません。しかし、理科室の薬品庫という第一印象の奥に、フルーティーさ、はちみつの甘い香り、潮の気配という何層もの表情を隠し持っています。1815年から変わらない製法が生む、ラフロイグでしか出会えない味。好きか、嫌いか。その答え合わせこそ、この1本の楽しみ方です。
商品情報
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※味・香りの感じ方に関する記述は、運営者いなはち個人の感想です。
※価格は記事作成時点の情報です。お酒は20歳になってから。
なお、常温で約5年保存できて調理不要の防災食パンを実食した記事もあります。「尾西のひだまりパン メープル実食レビュー|5年保存でしっとりもっちり、防災・登山・キャンプに」もあわせてご覧ください。
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